インプラント治療中の仮歯の役割とは?いつから入れる?注意点も解説

インプラント治療中の仮歯の役割とは?いつから入れる?注意点も解説
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インプラント治療は、欠損した歯を美しく再現するための信頼性の高い方法として、多くの方に選ばれています。治療過程の中で、特に注意が必要なのが「仮歯」の扱いです。
仮歯はその名の通り一時的な役割を果たしますが、管理や取り扱いの仕方によっては、最終的な治療の成功に影響を及ぼすことも。
そのためこのコラムでは、「インプラント治療中の仮歯が果たす役割」や「仮歯が入っている期間」などを解説していきます。

インプラント治療中の「仮歯」とは?

インプラント治療において、治療の過程で仮歯を入れることがあります。なぜ治療期間に仮歯を入れるのか、どのような役割があるのかなどを解説していきます。

インプラント治療中の歯がない期間に仮歯を入れる

インプラント治療とは、手術の初期段階で歯根の役割を果たすインプラントの土台を顎の骨に埋入します。具体的には、歯ぐきを切開して、顎骨に専用の穴を作り、そこにインプラント体を設置します。このインプラントが骨や周囲の組織としっかり結合するまでには数ヶ月の時間が必要です。
以上のようなインプラント手術の過程で、「歯がない期間」が存在するため、代替として仮歯を使用します。

インプラント治療中の仮歯が果たす4つの役割

インプラント治療中に入れる仮歯は、以下4つの役割を果たします。

  • 自然な見た目と発音のしやすさを保つ
  • 噛み合わせを維持する
  • インプラント治療の傷口を保護する
  • 顎の骨・歯茎の状態を損なわない

1つずつ、詳しく解説していきます。

自然な見た目と発音のしやすさを保つ

仮歯を入れることで、自然な見た目と発音のしやすさを保つことが可能です。
インプラントの治療期間中、仮歯を使用しないということは、新しい人工歯が取り付けられるまでの間は歯がない状態で過ごすこととなります。特に前歯の欠損は、審美性を損なう可能性が高いです。
さらに、歯がないことで発音の質にも影響をもたらし、コミュニケーションが難しくなる可能性も。
仮歯を入れることで、見た目を自然に見せて正しい発音のサポートもしてくれるため、治療完了までの期間をストレスフリーに過ごせます。

噛み合わせを維持する

仮歯を入れることで、噛み合わせの維持が可能です。 歯がない部分が生じると、隣接する歯が移動してそのスペースを埋めようとします。事実、歯は約1か月に1mmずつ動くといわれています。よって、たとえばインプラントの治療に半年かかるのであれば、単純計算で歯の位置が6mm移動するということです。
歯が移動することで、噛み合わせが悪くなることはもちろん、頭痛や肩の張り、顎関節症の原因ともなります。仮歯を入れることで、考えられる体の不調の予防になるというわけです。

インプラント治療の傷口を保護する

インプラント治療中に仮歯を入れることで、傷口を守る役割を果たします。
口の中には多数の常在菌が存在し、なかには虫歯やインプラント周囲炎、歯周病の原因となる細菌もいます。仮歯を入れることで、口内の細菌から治療部位を守ることが可能です。
仮歯を使用しなければ、炎症のリスクが増え、状況が悪化するとインプラントの固定が不十分になることも。また、熱や歯ブラシといった外部の刺激からの保護もしてくれます。

顎の骨・歯茎の状態を損なわない

インプラント治療期間に仮歯を入れないまま過ごすことで、顎の骨や歯茎が変形することがあります。また、長期的に入れ歯を使用している場合は、歯茎や顎の骨を圧迫している可能性が高いです。
そのため、インプラント治療中に仮歯を入れることで、顎や歯茎の状態を安定化させる役割を果たします。
仮歯を入れる前からすでに顎の骨や歯茎が変形している場合は、少しずつ仮歯を調整して、正常な状態に戻す方法もあります。

インプラント治療中の仮歯に使われる材質

人工歯の最終的な材質としては、セラミックや金属が選ばれることが多いです。その選択は、費用、アレルギーのリスク、見た目の美しさ、そして耐久性を考慮して行われます。

一方、仮歯は主にプラスチックで作られており、白い色合いで、実際の歯と遜色なく見えます。

しかし、仮歯はプラスチック製なので、正規の人工歯に比べてその強度は低く、時間が経つと変色や摩耗、割れのリスクが増えます。仮歯は一時的なものとしての位置付けを理解し、取り扱いには注意が必要です。

インプラント手術後はいつからいつまで仮歯を入れる?

インプラント手術後は、いつからいつまで仮歯を入れるのでしょうか。結論、仮歯を入れるのは最短でインプラント手術当日からで、人工歯を装着するまで仮歯を入れることとなります。

仮歯を入れるのは最短でインプラント手術当日から

インプラント手術において、仮歯を入れるのは最短で「インプラント手術当日」です。
インプラント手術当日に仮歯を入れる方法は、「即日負荷インプラント」や「即時仮歯」といいます。これらの方法を採用すると、治療の過程が削減され、体へのストレスを軽減させることが可能です。また、仮歯をすぐに装着することで、歯が欠けている期間を数日間短縮することができます。
即日仮歯を装着するには、良好な顎骨のコンディションや骨の再生・造成の必要性がないこと、適切な噛み合わせが得られることなど特定の条件が求められます。虫歯や歯周病のような、インプラント治療の成功を阻害する要素が存在する場合、即日の仮歯装着は適さないこともあるんです。
また、インプラント手術から7日〜10日におこなわれる抜糸後、仮歯を入れる方法もあります。
各歯科クリニックで、手術当日の仮歯装着の条件が異なることがあるため、手術後すぐの仮歯装着を希望する方は治療を受ける医師に事前に相談してください。

人工歯になるまでは仮歯を入れる

「インプラントの仮歯を入れてから人工歯を装着するまでの期間」は、仮歯を入れたままの状態が続きます。仮歯が入っている期間は、一般的に「3〜6ヶ月」です。
一般的に、インプラントを埋め込んだ後、上部構造(すなわち人工歯)を取り付けることが可能になるまでの期間は3~6ヶ月を要します。この仮歯を使用する期間は、インプラントが骨や周囲の組織ときちんと結びつくまでを待つ期間です。
この時間は、患者の口腔の健康状態や選択された治療方法によって変動します。仮歯を装着する時間の長さは、骨の量、骨の密度、設置するインプラントの数、そしてインプラントの初期安定性に影響されます。
インプラント治療中に仮歯が入る具体的な期間については、歯科医に問い合わせるとよいでしょう。

インプラントで仮歯が入っている期間の注意点

インプラントで仮歯が入っている期間の注意点は、以下の4つです。

  • 硬い食べものや粘着性の高い食べものは避ける
  • 歯ブラシは優しく丁寧におこなう
  • 仮歯を入れたまま治療をやめない
  • 仮歯が外れた・破損したらすぐに医師へ相談する

どの注意点も、インプラント治療を滞りなく進めるために大切なものです。1つずつ解説していきます。

硬い食べものや粘着性の高い食べものは避ける

仮歯は強度が高いわけではく、人工歯の装着がしやすいよう取り外しもしやすくなっています。そのため、硬い食べものや粘着性の高い食べものは避けるのが無難です。
以下のような食べものが該当します。

  • 硬い煎餅
  • 硬いパン
  • スルメイカ
  • ガム
  • グミ
  • キャラメル

仮歯を守るためにも、食べるものは慎重に選んでください。

歯ブラシは優しく丁寧におこなう

仮歯を装着している場合でも、口内の清潔を保つことが重要です。仮歯は天然の歯ではないため虫歯ができることはありませんが、周囲の天然歯は細菌が原因で歯周病や虫歯が発生する可能性があります。そのため、歯磨きは欠かさずおこなうようにしましょう。
ただし、強く磨くと仮歯が傷つく可能性があるので、やさしく磨くことを心掛けてください。インプラント治療中の歯磨きについては以下の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
【インプラント治療後の歯磨き】注意点や歯磨き粉の選び方を徹底解説

仮歯を入れたまま治療をやめない

仮歯を入れたまま、インプラント治療を中止しないようにしましょう。
インプラント治療中の仮歯は、あくまでインプラント治療中にしか役割を果たさず、長期間の使用や放置は推奨されません。プラスチック製の仮歯は経時劣化が進行し、その機能や形状が変わる可能性があるためです。
そのため仮歯を入れる場合は、医師の指示に従ったうえで治療を完了するようにしてください。

仮歯が外れた・破損したらすぐに医師へ相談する

仮歯が外れた・破損した場合は、すぐに医師へ相談してください。仮歯がない状態や欠けている状態を放置すると、以下のような問題が生じるためです。

  • 歯の位置がずれてかみ合わせに影響がでる
  • 傷口の保護ができなくなることで細菌の感染リスクが高まる
  • 歯の位置が移動することで、元と同じ仮歯や作成した人工歯が入らなくなる

これらの問題を防止するためにも、仮歯が外れたり破損したりしたときは、すぐに医師へ相談をしましょう。

まとめ

インプラント治療の過程で使用される「仮歯」は、一時的なものとはいえ、噛み合わせの維持や傷口の保護などで大きな役割を果たします。適切なケアや食事の際の注意、そして定期的な検診など、仮歯を上手に管理することで、インプラント治療の成功をより高められます。
今回の記事でご紹介をした内容について十分に理解したうえで、インプラント治療を成功へ導きましょう。
おくだデンタルクリニックでは、インプラントのご相談を随時承っています。インプラントを検討中の方やインプラントについて不安がある方など、ぜひお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者

本院院長 奥田 健太郎

略歴

2002年 日本歯科大学卒業
2002年 歯科医師免許取得
2003年 医療法人京和会梅田歯科 勤務
2005年 医療法人武内歯科医院 勤務
2009年 おくだデンタルクリニック開院 院長就任
2010年 九州大学大学院 博士号(歯学博士) 取得
2010年 九州大学大学院 歯学府 卒業
2011年 医療法人社団 健光会 設立
現在に至る

所属学会

アメリカインプラント学会
日本口腔インプラント学会
国際口腔インプラント学会
AAIDアメリカインプラント口腔学会
日本顎咬合学会